人事制度と就業規則に強い、京都・大阪の社会保険労務士 藤井社労士事務所

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採用・面接のこと

そもそも人の採用って何のため行うものなのでしょうか?
欠員が出たから、今の業務が多忙で人手が足りないから、何年後かには定年退職者が発生するのがわかっているから・・etc

各企業とも色々な事情があって採用活動をしていると思います。
でも本来採用は企業が成長するために行うものです。ところが、採用する人を間違えると、役に立たないばかりか会社に危害を及ぼすことすら考えられます。

そのようなことにならないように、人の採用は慎重に行うようにしましょう。


1.人を雇う前に知っておくべきこと
(1) 募集・採用についての注意点
① 求人票について

募集をするに際して、求人票に見込み額として記載された採用者の初任基本給の額は、将来入職時にまで確定されることが予定された目標の額であり、確定的な労働契約の内容とはなりません。

ただし、求人票記載の見込み額を大きく下回る額で賃金を確定するべきではないでしょう。

② 採用は自由に出来るか

労働基準法では、「労働者の国籍、信条、または社会的身分」を理由とする労働条件の差別的取り扱いを禁止しています。

しかし、これは雇入れ後の労働条件のことを言っており、雇入れそのものにおける差別的取り扱いを禁止してはいません。そのため、上記の理由により不採用とすることは可能です。ただし、無用なトラブルを避けるためにも、他の理由を考えておき、不採用の理由を問われたらそちらを答えておくのが無難でしょう。

また、男女雇用機会均等法では「性別」を理由とした差別的取り扱いを禁止しています。これは募集・採用にも適用されます。

③ 内定取り消しについて

採用の内定といっても、単なる採用の予約にすぎないものから、ほとんど雇用契約の締結に等しい強い内定まであり、法的な効力に幅があると考えてください。
この内定の強さは、①内定通知の内容・形式、②内定期間中の内定者の取り扱い、③辞令の交付、④保証人や誓約書の扱い、などを勘案して判断することになります。

内定の強さにもよりますが、内定取り消しができるとされる事由は、内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として認められることができるものに限られています。

(2) 試用期間についての注意点

試用期間とは、新たに雇い入れた従業員について、会社が本採用に先立って「試みに」使用する一定期間を定め、その期間中に従業員としての適性の有無を判断して、本採用するかどうかを判断する制度のことです。
試用期間の長さについては、特に定めはありませんが、不当に長期間にわたることはもちろん許されません。一応の目安としては2~3ヶ月程度、長くても6ヶ月程度とするのが良いでしょう。
また、試用期間を延長することは、従業員にとって不利益となることですから、できる限り避けたほうが良いでしょう。所定の試用期間だけでは、従業員としての適性が判断できないような事情が試用開始後に発生したり、判明したりした場合に限るべきです。

また、採用するに当たり試用期間を設けるとしても、労働契約自体はすでに成立しているとみなされます。試用期間中の解雇は、企業が当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を、試用期間中の勤務状態等により知るに至り、その者を引き続き雇用することが適当でないと判断することに合理性がある場合には許されます。ただし、入社から14日経過後は解雇予告手当てを支払わなければならなくなりますので、注意が必要です。

(3) 労働契約についての注意点

① 労働契約で明示すること

従業員を雇い入れようとする使用者は、労働契約を結ぶ際、労働条件を明示しなければなりません。明示しなければならない項目は以下のとおりですが、1~5(昇給に関する事項除く)に関する事項については、これらの事項が明らかとなる書面を労働者に交付しなければなりません。

1 労働契約の期間に関する事項
2 就業の場所および従事すべき業務に関する事項
3 始業および就業の時刻、所定労働時間を越える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて就業させる場合の就業時転換に関する事項
4 賃金(退職手当および臨時に支払われる賃金除く)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りおよび支払いの時期ならびに昇給に関する事項
5 退職に関する事項
6 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項
7 臨時に支払われる賃金(退職手当除く)、賞与および労働基準法施行規則8条各号に掲げる賃金ならびに最低賃金額に関する事項
8 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
9 安全および衛生に関する事項
10 職業訓練に関する事項
11 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
12 表彰および制裁に関する事項
13 休職に関する事項

6~13については、定めがある場合のみ明示義務があります。
また、これらの明示事項は就業規則に記載されていることが多く、実際には、当該労働者に適用する部分を明確にして就業規則を交付しても差し支えありません。

② やってはいけない労働契約

以下のような労働契約は、たとえ労働者の同意があったとしても締結できません。

一定期間退職させない契約期間満了前の退職者に違約金を支払わせる契約結婚退職・出産退職などを誓約させる契約労働組合に加入しないことを条件とした契約


2.雇う前にちゃんと見極めよう!(1) 納得するまできちんと選ぶあなたがゴルフクラブを選ぶときどのように選ぶでしょうか。パンフレットで情報を集め実際に店頭で見て素振りをして確かめ、時間の経つのも忘れ、納得するまで選ぶはずです。社員を採用する場合も全く同じです。

とにかく納得するまで選んでください。

会社の風土に合わない社員を採用することは無駄なことです。数ヶ月で辞められては費用的にもかなりの負担になります。ただゴルフクラブはこちらが一方的に選ぶことが出来ますが、採用の場合は相手からも選ばれることを忘れてはいけません。
まずは相手に応募してもらわなければ何も始まりません。

相手に応募してもらうためには他社と違うことをしなければ目立たないような気になりますが、会社として探している人材像と労働条件をはっきり表示することが一番大事です。
その際カッコつけずに本当のことを書くようにしてください。自分の夢や経営計画を話すのは、面接まで控えておきましょう。

(2) 採用する上でのポイント

一番大事なのは何のために採用するかを明確にすることです。
実は多くの会社では結構この辺が曖昧で、ただ退職者の補充や、なんとなく新卒が欲しいなどの理由で採用を行ってしまう場合が多いのです。
次にどのような人が欲しいかをある程度明確にしておきます。中小企業の場合、なかなか優秀な人からの応募は難しいので、「休まなそう」とか、「打たれ強そう」など、ちょっと変わった基準を持つのも良いでしょう。
そして何より直感でいいので一緒に働けそうな人を選ぶようにしてください。社員間の関わりが濃厚な中小企業の場合、能力は高くても生理的に合わない人は避けるべきです。そのため、面接には必ず直属の上司になる人に同席してもらってください。
能力は入社後の教育で磨くくらいの気持ちでいたほうが良いかもしれません。どうしても優秀な人が欲しい場合は費用はかかりますが、一般の募集ではなく人材バンクなどの専門の職業紹介会社や派遣会社に頼んだほうが良いでしょう。
最近は大企業をリストラされたり、見切りをつけて辞めたなど、きちんと訓練された人も登録されていますので検討してみてください。

(3) すぐ辞めさせないために

せっかく採用してもすぐに辞められてしまっては、また多くの費用と労力が必要になってしまいます。
早期に辞める社員の多くは募集広告や面接時の印象と、実際に働いて見たときのギャップの大きさで辞めていきます。
また、社内で新人の受け入れ態勢(中途採用に壁を作ることや、新卒にやたら厳しい例はよくあります)が整っていないため、仕事の内容以前に人間関係がわずらわしく辞めてしまうこともあります。
経営者としてはこのようなことを避けるために下記のようなことに注意して採用活動を行い少しでも戦力になる社員と出会って欲しいと思います。

面接時に社風を説明する。労働条件(特に賃金、労働時間、休暇)は本当のことを言う。仕事内容や期待される成果をはっきりと明示する。

新人教育担当にしっかりと役目を説明してから指導させる。


3.面接・面談の心得10箇条(1) 態度と対話で工夫誰でもそうだと思いますが、初対面の場合はお互いに緊張感が漂うものです。ましてや就職の面接の場合はなおさらのことです。

このような緊張感の中で相手の本音を引き出すのはとても困難なものです。そこで、応募者をリラックスさせるために工夫をします。

相手の緊張をほぐす会話の工夫
~ 「会社には迷わずこれましたか?」など応募者に対して親しみのある言葉づかいや挨拶をする
名刺を渡したり、簡単な自己紹介をしたりする
~ 「はじめまして、採用担当の○○といいます。どうぞよろしく」など
話しやすいムードをつくる。
面接者として配慮を示し、謙虚な姿勢で話しかける
~ 「どうぞお気軽にお答えください」
相手が興味を持っており、得意とするところを掘り下げて話す。
~ 「○○がお得意のようですけど、いつ頃から興味をお持ちですか」
応募者の答えに批判的な態度をとらない。

(2) こんな言葉に気をつける

面接者が正しいこと、筋の通ったことを話していたとしても、受験者が不愉快に思ってしまっては、その面接は失敗します。
受験者との話し方については以下の点に十分注意するようにしましょう。

誠意を込めて話しているか
明るい態度で、笑顔で話しているか
声のトーンが高すぎたり低すぎたりしないか
正しい敬語で、上品な言葉で話しているか
自分の言葉の癖に注意しているか
同じことをクドクド言っていないか
ユーモアを交えているか
受験者の非を責めることなく、良さを引き出すような話をしているか

(3) 人材を発掘できる話題づくり

面接をするに当たって、まずは相手をリラックスさせることからスタートさせるようにします。そのためにはいきなり本題に入らずに、世間話で場を少し暖めましょう。
導入部の話題としては以下のようなものがあります。

季節の話題
~ 「ずいぶん暖かくなってきましたね」
趣味の話題
~ 「釣りがお好きなようですね。よく行かれるんですか」
ニュースの話題
~ 「今日のニュースで○○の件が大きく取り上げられていましたね」
旅行の話題
~ 「どんなところへ旅行に行かれますか」
スポーツの話題
~ 「お好きなスポーツはありますか」
衣装の話題
~ 「おしゃれなスーツですね。どちらで購入されたんですか」

(4) 心配りは重要です

前項のように、相手をリラックスさせる会話に気を配るのもさることながら、そのほかに気をつけることがいくつかあります。

面接会場は静かで落ち着けるところにする
受験者を長時間待たせることを避け、長くても30分くらいまでにする
個人面談の時間は30分くらいまでにする
相手の弱点を突いたり、あげ足を取るような質問をしないようにする
冗談ともつかない、下品でふざけた質問をしないようにする
採用してやるんだ、というような上からものを見た態度での話し方をしない
面接の待合室や控え室ではお茶を出したりする
受験者とは近すぎず遠すぎない距離を保つ(1.5~2メートルくらい)

(5) してはいけない質問や言動

当たり前のことですが、面接では応募者の基本的人権を尊重しなければなりません。差別につながるような質問は禁止されています。何の気なしに質問したことでも、相手にとっては差別的な質問と感じることがあります。以下の様な質問には注意が必要です。

本籍地を書かせたり、質問したりしてはならない
~ 「あなたのご両親の出身地はどこですか」
~ 「あなたの産まれたときに住んでいたところはどこですか」
家族の収入や資産状況などを書かせたり、質問してはならない
~ 「あなたのご両親の収入を教えてください」
~ 「あなたのご実家には資産がどのくらいあると思いますか」
思想・信条について書かせたり、質問してはならない。
~ 「あなたは○○宗教を信仰していませんか」
~ 「あなたは○○党のことをどう思いますか」
性差別につながるような質問をしてはならない
~ 「今彼氏がいますか」
~ 「彼氏とは何年付き合っていますか」

(6) 答えを引き出す態度

面接は基本的に対話が中心となります。面接を成功させるためには相手の答えを的確に引き出すことが重要です。以下の点に注意をして、的確な答えを引き出すようにしてください。

相手の話を受け入れる
「そうですね」「ええ」などの相槌を軽く打つことで、受験者が自分の話を聞いてもらっていると納得させる。
話を繰り返して確認する
~ 「今、○○とおっしゃいましたけど、それについて・・・」
要約して相手の話をうまくリードする
~ 「なるほど、つまり○○ということですね」
相手の話に賛同する
~ 「なるほど、それはその通りですね」
話をリードして内容を掘り下げる
~ 「その件についてもう少し詳しく教えていただけませんか」

(7) 会話をスムーズにするあいづち

普通の会話でもそうですが、相槌のない会話はぎこちないものです。適度に相槌があると、会話もスムーズに行きますし、途切れてもうまく繋ぐことができます。
面接についても同様で、特に受験者は緊張しているものです。面接する側がうまく相槌を打つことによって、話題をどんどん変え、相手から質問を引き出し、人物を見抜いていきましょう。

(8) 採否を告げる工夫

面接が終わり判定が決まると、採用か不採用かを受験者に告げなければいけません。
しかし、面接終了後すぐに採用・不採用を告げないようにしましょう。
もし採用となっても、誰でも良かったのでは、という印象を与えることになり、自分が安っぽく見られた気になってしまいかねません。
不採用の場合は、最初から採用する気無いんじゃないか、と会社に対する印象が悪くなってしまいます。
そのため、当日の通知は避け、翌日以降に連絡するようにします。

(9) 応募者との議論は禁物

面接はあくまでも相手の良い面や本音を聞き出す場です。
国会答弁や警察の尋問のように、相手に威圧感や緊張感を与え、執拗に相手のあげ足を取って、自己満足するようなことは絶対にしてはなりません。
たとえ自分の考えや主義と違った回答をしたとしても、その場で否定をして議論をすることなく、さらっと流して次の話題に移るのが良いでしょう。

(10) 専門用語は使わない

相手を困らせるために専門用語を使って話しかけたり、難解なテーマを持ちかけるのは避けたほうが良いでしょう。そのような話題で受験者の良さを引き出すことはできません。
もし、相手の知識の深さや、考えの深さを知りたいのであれば、ペーパーテストを実施する方がより効果的です。
できるだけ誰にでも分かる平易な言葉で話を進めてください。