人事制度と就業規則に強い、京都・大阪の社会保険労務士 藤井社労士事務所

 【ご連絡】 8月の新規案件の受任を開始しました。8月は3組限定ですのでお早めにご依頼ください


2.賃下げをしたい

(1) 賃金カットを行う前にしておくこと

人件費をカットしたりする前段階として、役員人数の削減、役員報酬の削減、経費の削減、遊休資産の売却などを行う必要があります。
なぜなら、社員に現在会社の置かれている危機的状況をきちんと伝え、納得してもらう必要があるからです。
これらを行わずにいきなり人件費をカットしたりすると、必ず感情的な反発が起こり、業績にも悪影響を及ぼします。
人件費をカットしたり、解雇したりすることは最後の手段であることを経営者がきちんと認識しておくことです。
また、社員の士気が落ちることが予想されますので、できるだけ社長自ら十分説明することが必要です。

1.  業績が低迷している理由

2.  自社の現状と賃金カットせざるを得ない理由

3.  業績回復のためにどのような手を打とうとしているか

4.  そのためにはどうしても社員の協力が必要であること

5.  業績がどこまで回復したら賃金アップできるようになるのか

6.  将来会社がどのような形で社会に貢献しようとしているのか

 などを具体的に示すとよいでしょう。

(2) 具体的な賃金カットの方法

① 役員報酬のカット 

役員報酬の切り下げは、比較的簡単に行うことができます。
取締役会を開いて、役員報酬を引き下げる旨の決議をし、議事録を作成すれば終わりです。
 

役員が社会保険に加入している場合は、役員報酬を引き下げてから3ヶ月経過してから社会保険料の「月額変更届」を提出すれば、社会保険料も削減することができます。

② 役職手当カット

役職手当カットの方法は3つあります。

役職手当の返上 

管理職に手当てを返上するよう要請し、管理職従業員などが本人の意思で賃金の一部を返上する措置をとります。もちろん本人の意思が必須です。

役職の変更

役職が変更された場合、それに見合った役職手当になります。降格などで役職を外れた場合は0になることもあります。

就業規則の変更

就業規則の役職手当を減額変更します。ただし、これは従業員にとって不利益変更になるので、合理的な理由と従業員の同意が必要になります。


③ 通勤手当・住宅手当など各種手当てカット 

従来の固定手当てを減額・廃止し、その代わりに、たとえば会社や個人の成績によって変動する業績手当てをしたりしてバランスを図ります。
また、廃止する際にも一定割合を基本給に組み込んだりするなどの方法も検討が必要です。
従業員にとって不利益変更になるので、就業規則を変更する際に合理的な理由と従業員の同意が必要になります。
 

④ 基本給カットの方法

基本給の引き下げは従業員からの反発も多く、非常に困難であるとお考えください。
労働組合のある会社であれば、労働協約で常時使用される労働者の3/4以上の同意があれば可能です。
しかし、中小企業においては労働組合があるところは少ないですので、基本的には個別同意が必要になります。

⑤ 営業手当て支払いによる残業代のカット

出張や外回りの営業のように事業場外でなされる業務については、労働時間を「みなし労働時間制」により算定することができます。
「みなし労働時間制」を採用することにより、何時間働いても所定労働時間働いたとみなすことができますが、従業員からすると不満が残ります。そこで、残業代に見合った金額の営業手当てを支給します。
「みなし労働時間制」を採用するには労使協定(労働者の過半数の代表との協定)を締結する必要があります。

⑥ 残業時間の規制

残業時間を規制する方法はいくつかあります。

残業を許可制にする

一定時間を越える残業については許可制をとり、事前の許可のない残業は一切認めないようにします。

残業の限度時間を決める

「残業は月○○時間まで」と言うように上限を決めることで長時間残業の抑止力となります。ただし、○○時間を超えた分についても残業代を支払う必要はあります。

変形労働時間制などを取り入れる

フレックスタイム制や1ヶ月単位・1年単位の変形労働時間制、裁量労働制などを活用することも残業時間の抑制につながります。

⑦ 昇給の停止

昇給を一律に停止することも時には必要かもしれませんが、優秀で将来見込みのある者まで昇給を停止させるのは会社の将来に悪影響を及ぼしかねません。
あくまでも社員を査定した結果として、昇給のある者とない者のメリハリをつけることが必要です。

就業規則などに「昇給は本人の能力・職務実績・勤務実績・人事考課・勤務態度等を勘案して年1回以上行うことがある」としておけば、会社は能力のない者への昇給義務を免れることができます。

⑧ 労働時間短縮による賃下げ

仕事量の減少に伴い、労働時間を短縮して賃金を下げても問題はありません。
たとえば「週40時間」を「週35時間」に引き下げ、賃金も同じ割合で減少させます。
就業規則を変更する場合には、不利益変更となる可能性がありますので、従業員の同意が必要になります。

⑨ 降格・配置換えによる賃金削減

降格や配置換えについて、一般的には、その人事権は会社側の経営上の裁量に属し、自由になし得るとされています。
ただし、思想・信条や社会的身分を理由としたものや、社会通念上著しく妥当性を欠くものは権利の濫用とされます。

⑩ 賞与カット

毎月の給与とは異なり、就業規則に「賞与は毎年月と月に支給する。ただし、会社の業績により支給しないことがある」と定めておけば、会社の裁量で増減は可能です。